私たちが撮影するのは「物」ではなく、心あるドールです

 一般的に写真を撮る場合、被写体には手を加えないのが原則だと思います。風景写真でゴミを拾う位はあると思いますが、人でも物でも基本そのまま撮影するというのが普通だと思います。しかしドール写真の場合撮影前にドール自身を魅力的な被写体にセットしてあげる必要があります。機材、構図、カメラの設定以前のドール写真ならではの準備です。

 まずは突っ込みどころ満載の写真を一枚お見せしたいと思います。この写真を見て「ドール写真っていいな!」と思うでしょうか?答えはNoだと思います。ドールに対して全く配慮の無い為、折角の可愛いドールを変な物体に仕立ててしまっています。

 具体的にこの写真に突っ込むと・・・

・ ウィッグが乱れている、ズレている。

・ リボンがずれている、シャツの裾が汚い、スカートが捲れているなど服が乱れている

・ 手のポーズが不自然、脚がガニ股

・ 目線が明後日の方向を向いている

・ 背景に関係ないゴミが写り込んでいる

 ということが挙げられます。今回はミスが全部入りなので画面全体から異様さを醸し出していますが、このうちの1個、2個をミスってしまったという様なことなら経験者でもあることだと思います。

 まずはカメラの設定、構図の前にこれら全てをクリアにする必要があるのがドール写真の特徴です。撮影前に被写体をきちっとセットする考えはドール写真というジャンルならではのポイントだと思います。

 先程突っ込んだところを全てクリアにして撮影してみました。ドールも機材も撮影者の技量も全く同じですが、ドールに気を遣うだけで写真の仕上がりは雲泥の差になります。

 冒頭にも少し書きましたが、ドール写真の場合使用機材のグレード、構図やカメラの設定などの知識以前にこのドールのセッティングが大きく影響してきます。ここを無視して高い機材を揃えて理論を学んでも土台の無いところに家を建てるようなもので、出来上がった写真は「砂上の楼閣」となってしまいます。

【コラム】恐ろしい「うちのこかわいいフィルター」

 今回は撮影をする前にドールのコンディションをチェックしましょうというお話でしたが、その時正しいジャッジを阻むのが私が「うちのこかわいいフィルター」と命名したフィルターです。このフィルターがかかっていると「うちの娘は絶対に可愛い」という評価が先に来ますので、上の様な写真でも「可愛いうちの娘が無邪気にはしゃいでいるだけ」と見えてしまい結果「問題点の無い可愛い写真」と判断してしまいます。

 「うちのこかわいい」と愛情を注いであげることはドール相手にはとても大事なことですが、撮影前のチェックでは「うちのこかわいい」は少し置いておいて「よそのこでもこの状態で可愛いと思えるだろうか」客観的に見てあげる必要がありそうです。

【おまけ】

 ちなみに今回背景は下のグラデーションペーパーとスタンドを使用しました。グラデーションペーパーは単色の他7色セットもあります。50~60cmドールですとギリギリの大きさですが、これがあると写真館の様なシンプルで綺麗な写真が撮影出来ます。

 また脚を閉じての自立は難しいですが、写真右の様に検査鏡でつっかえ棒をして三点支持とすると容易に自立します。作例では棒は見えませんが、左足の後ろ側を通っており、アングルを工夫して死角に配置する様にしています。そして設置側の先端にはシリコンゴムを装着し滑りを防止しています。

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