Limitedレンズがあるから、PENTAX!

 PENTAXの人気レンズシリーズにLimitedレンズがあります。レンズの性能を数値化した表の一つにMTF曲線というものがあり、レンズ性能はこのMTF曲線で語られることが多いですが、このLimitedレンズではこの数値での評価以上に「実際に出来上がったプリント見てどう感じるか」を重要視したレンズです。

 実際開発時は開発室にピクトログラフィーを導入し、写真家大竹省二氏からアドバイスを受けながら何度となく試作品を作ってはダメ出しをしていったそうです。この評価方法は官能評価と呼ばれているようです。つまりLimitedレンズは官能評価に優れたレンズと言い換えることが出来ると思います。

 ピクトログラフィーとは現在は製造中止となっていますが、FUJIFILMが作った薬液を使わず簡易に銀塩式の大型プリントを出力出来る機械です。私の知っている2000年台でも数百万円でしたから開発当時の1990年代なら多分数千万円位したと思います。

 Limitedレンズ開発に携わった一人「ミスターPENTAX」こと池永一夫氏。レンズ開発の中で自分より年齢が上の(その為多分視力が劣っている)写真家に違いが見えて、自分に見えないのが悔しくてとにかくたくさんの写真が見たと当時の話をしていただきました。

 そして「一度違いが見えると、次からは簡単に分かるんですよ。」ともその後語ってくれました。高い目標を掲げたプロジェクトはその製品の完成度の高さだけでなく、それに携わった技術陣の力も飛躍的に向上させるというような少し格好いいエピソードです。

 それ位画質には徹底的に拘りましたので完成したレンズは抜けの良いクリアな描写、繊細な描写、柔らかい髪の描写を実現しています。当時の市販レンズの延長線上にある高性能なら今日のデジタル全盛のレンズ市場では淘汰されていたかもしれません。

 しかし当時別次元の新しいものを作った結果でしょうか、今日でも数値上は上をいく現行レンズとは別格の評価を受け「LimitedレンズがあるからPENTAXを使っている」という人も多数います。Limitedレンズはそんなレンズです。

 私の場合K-1からのペンタユーザですので当初はあまりLimitedレンズは興味ありませんでした。というよりむしろ「20世紀のレンズに満足しているなよ、早くD-FAレンズを出してくれ!」という感じでした。しかし「まあ、そういわず一度使ってみてくれ!」と一本渡された時から考えが変わりました、「凄くいいです!」と。

 具体的に何がいいというのはやはり実際に撮った写真を見ていた頂くのが良いと思います。

 「smc PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited」で撮影してみました。基本Limitedレンズは開放で撮ってそのボケの美しさを体感して欲しいと言われましたが、一方近撮の場合はf2.4を使用すると一番いい絵になるとも仰っていたのでセオリー通りにf2.4で撮影してみました。

 目にピントを合わせましたが、目の縁やピンの合っている髪の毛は現行レンズ並みにシャープに写っていますが、遠方になるに従って綺麗にボケていきます。髪の毛の後ろ側や背景のボケも本当に美しく描写されています。

 また白い服も細かい所まで表現されており「白ワイシャツに付いている貝殻ボタンの輝くを表現出来る」という繊細な表現も達成できているのではないでしょうか。

 もう一枚切り株の写真をお見せします。こちらもf2.4で撮影しています。この写真は住宅街の公園で作例用にちょこっと撮影しただけなのですが、木の質感いい感じで、背景のボケも美しく表現されているので「住宅街の公園感」は皆無な写真になりました。

 種明かしをすると奥の部分にはテニス練習場があったり本当にただの公園なのですが、その部分が綺麗なボケで打ち消されていますので山の中に居るような神秘的な雰囲気になりました。ロケーションのありきたり感を道具が補ってくれた良い例だと思います。


smc PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited

 もう一枚は「HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limited」です。デジタル全盛の時代にLimitedレンズの設計思想を受け継いで作られたレンズです。こちらも勿論開放で撮影してみます。目にピントを合わせましたが、目、ピントの合っている髪はカリカリに描写されていますが、背景は単焦点レンズらしく美しいボケを形成しています。

 このレンズはレビューも書いていますのでそちらも是非ご覧ください。


HD PENTAX-DA 21mmF3.2AL Limited

 全く興味が無かったのに「まあ、一度使ってみてくれ!」と一本渡されたあとズルズルと・・・というとまるで薬物の様ですがw、Limitedレンズには使ってみるとはまる何かがあります。まだまだ増えそうで怖いのですが、「ドール、鉄道模型、Limitedレンズは勝手に増えるもの」と自分に言い聞かせています。

 私は初めてカメラを買う人にはズームレンズキットをオススメしているのですが、慣れてきて「単焦点が欲しい!」となった時は一番使う画角に近いLimitedレンズをオススメしたいです。高性能なズームレンズで見ていた当たり前の高解像度な世界が、目を見開いて暫く見つめてしまうような世界に変わると思います(勿論練習も必要です)。

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