青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸 1

 青森駅横の青森港には昭和63年9月まで鉄道連絡船として活躍した「八甲田丸」が係留されています。今回は入口の船楼甲板、遊歩甲板、船橋と紹介してゆきます。

 こちらが入り口、乗船口になります。乗組員的には「舷門」と呼びます。乗下船時には「舷門当直」の腕章をした乗組員さんがこちらに立っていました。

 入り口で500円の見学料を払いいよいよ見学開始です!記憶では制服が展示されている場所が売店、その裏が食堂だったと記憶しています。青森市場の展示は東京で展示されていた羊蹄丸(解体済)のものです。

 入口二階の船楼甲板に対し三階は遊歩甲板と呼ばれます。遊歩甲板にはグリーン船室がありました。グリーン船室の指定席はこの様に一人掛けでリクライニングも60度まで効きましたので深夜便の仮眠にも最適でした。

 勿論当時の座席が全て残っているわけではないのですが、改造され展示スペースとなった左舷側には当時の貴重な展示が沢山あります。

 更にその奥には寝台室があります。毛布が扇状になっていますが、これは飾り毛布と呼ばれる物で趣向を凝らしたその造型にお客さんを喜ばせた物です。

 更に奥、船の最先端には士官室がありました。ここは船長室ですが、この士官室にも階級があり洗面台(ベースン)が付いている部屋は6つだけでした。船長、機関長、一等航海士、一等機関士、通信長、事務長の六職で「サロン六職」などと呼ばれて洗面台付きの部屋が与えられていました。この部屋の洗面台が一般士官の憧れのでもありました。

 更にここでは当時のサロン六職と記念撮影できるコーナもあります。右は北山船長、元大雪丸の乗組船長(連絡船には3人の船長が乗っていたのですが、人事権のあるリーダー船長です)、左の葛西機関長は本船八甲田丸の機関長、機関部のリーダーでした。

 その他色々懐かしい展示品がいっぱいですが、お待ちかねの航海船橋をそろそろご案内しましょう。

 階段を一つ上がると航海船橋です。今では当たり前の技術ですが、当時は最新鋭の技術を結集した船舶でした。距離が比較的短い反面、気象条件が厳しく、国有鉄道と言うこともあり試験的に技術が投入されることも多かったのです。ちなみに民間船で日本で最初にレーダが搭載されたのもこの青函航路で昭和25年に洞爺丸、十勝丸に搭載されました。

 冬の時化、吹雪と何度も戦った旋回窓。こんな所にも歴史を感じます。

 こちらがプロペラコントローラーです。左右プロペラとバウスラスターを制御できます。昔の船が固定ピッチでエンジンの回転で速度を制御していたのに対しこちらは推進軸の回転はそのまま、プロペラの角度を変えて速度、前進後進まで制御できました。出航、入港時は三等航海士が操作しました。私の奥には機関室との通信用にエンジンテレグラフがあります。

 舵というよりは車のステアリングのようですが、これが舵輪です。左奥には汽笛のボタンもあります。出港と着岸は5秒の長声一声ですが、出港30分前、葛登支(湯島)航過の長声二声は5、1、5と4、2、4で鳴らす組があったみたいです。万一汽笛が壊れた際のモーターサイレンへの切り替えも船橋でワンタッチです。

 船舶の無線と言うとトン・ツーのモールス信号(電鍵)を連想しますが、近海船の場合このVHF帯の電話無線も活躍していました。雁行船の情報や桟橋とのやりとりはこのVHFを利用していました。

「青森、青森、こちらは八甲田丸」

「八甲田丸、八甲田丸、こちら青森どうぞ!」

「本船湯島航過○時○分でした、港内模様どうぞ!」

「湯島航過○時○分了解。港内模様は北の3m(の風)岸壁は1岸です、どうぞ。」

みたいな口語で通信していました。ちなみに今の会話は上り便の例で下り便は葛登志灯台の航過時刻を函館桟橋に送ります。航空機が着陸前に管制に承認を受けるのと同じ感じです。

 ところで一等航海士がVHFを握っているのでこれは航海当直中という設定のでディスプレイと想像できます。入出港時は一等航海士は船首担当で船橋に居る士官は船長と三等航海士だったので、一等航海士が居るのはスタンバイ解除後の航海中ということになるのです。

 そしてこちらが通信室、電鍵でモールス信号を送れます。こちらには通信長が乗務していました。時計は国際標準時と日本標準時を刻めるように二個あります。

 ところで15分、45分から各3分間が赤く塗られていますが、これは遭難信号を聴取する為にこの時間は「ボリューム」と呼ばれ国際法でSOS信号以外を発信してはいけない決まりになっています。その為にわかりやすく赤く塗っているのです。

 船舶の運航に必要な通信の他、運航当時は携帯電話の無い時代ですから、お客さんからの電報なんかも受け付けていたみたいです。

 本船の信号符字はJRRXでした。それではまた次回に続きます。



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